ダンブッラの病院にて

 Rock templeでご紹介したダンブッラをぶらぶら歩いていた時に、たまたまこの町の病院の前を通りかかりました。職業柄、そして抑え難い興味もあって、思い切って病院の人に「私達は一応日本で働いている者なのですが、見学させてもらえますか?」と聞いてみたところ、ほんのちょっぴり相談して”no problem"とのこと。いきなりですが、現地の病院見学をさせていただきました!この行き当たりばったりな流れ、とっても私達の旅っぽいです(笑)
        
                   病院の比較的正面  
 スリランカの病院はnational hospital(国にひとつかふたつだけ。一番高次医療を行う)、general hospital(都市部にのみ数個。次に高次)、base hospital(地方都市に1個ずつ)、あと2段階くらい診療所レベルの所があるそうで、ここはダンブッラのbase hospitalでした。1日の外来数は100人強くらいらしいですが、ちゃんと入院施設もあります。
 日本にしばらく留学していたことがあるというDr.が、まずは小児病棟に案内してくれました。ちなみに、病棟内の写真は撮っていません。病棟の収容人数は10〜20人くらいで、ここでもやはり1番多いのは呼吸器感染症だそうです。
       
お隣はなんといわゆるNICU。何台もクベースがあるのにびっくり!失礼ですが、こんなにやっているとは思っていませんでした。ここでは未熟児ではなく、主に出生時の合併症で調子が悪くなった赤ちゃん達を診ているのだそう。あとは普通の病棟とは別で”diarrhea ward"があるのがお国柄というか・・・。下痢専門病棟ですね。入院している子は大体ルートはロックしてありました。1日に何回か入れるのかな?子供のルートは手背でとっているのが、「ああ、どこも一緒なんだ〜」と妙に感動☆
 次は内科病棟(男)。疾患は日本とそれほど変わりはないようですが、とにかく薬の種類が少ないのが悩みのよう!
       
これがこの病棟の内服薬のすべてです。ここでは点滴の薬はない、みたいなことを言っていました。心筋梗塞だという人も、一応モニターは付いているけれど電源は入っていないんですが・・・??
 次は外科病棟(男)。ここでは病棟にいた外科のDr.ともお話できました。ここで足りない物は何ですか?と聞くと、「まずはシリンジ。マンパワーは何とかなるけれどシリンジが無いんだ」と溜息混じりにおっしゃっていました。物が無いから、せっかく技術を持っていてもそれを生かすことができないのだそう。ここではアッペや開放骨折、蛇に咬まれた時?のオペなどはやっているそうですが、清潔なシリンジが足りていません。なので、麻酔のためのルンバールをするとみんな髄膜炎になってしまう(!!)という、何とも本末転倒な事態がまじめに起こっているそうです。それにはDr.も困っていました。「でもオペをやらないわけにもいかないし・・・。」と。そして髄膜炎になっても抗生剤は内服ですものね・・。聞いているだけで困ります★普段は当たり前だと思っているかもしれないですが、ほとんどの物がディスポの病院にかかれる日本の私達は、本当に恵まれているんです。そうそう、「テルモのシリンジ、あれはいいね!」とテルモはお褒めにあずかっていましたよ。
        
        
そしてここは救急室。といっても今は平和で、スタッフの方々はこんなにこやかな笑顔です☆
        
 他にも整形病棟、精神科病棟など幾つかあるようでしたが、あちらにもご迷惑だろうと思ったのでとりあえず丁寧にお礼を言っておいとまする事にしました。
 それにしてもいきなり現れて、「日本で医者やってます」と言っても本当なのかも、どこの馬の骨ともわからない私達に、病院の方はとっても親切でした。本当にありがとうございました!スリランカの人達って、基本的に親切なんです。

 現地の病院を見てから日本に帰ってくると、「咳と鼻水が・・・」なんてことで病院に来る人達にちょっぴり力が抜けてしまいます。日本とあちらの医療を同じ土俵の上で考えること自体がナンセンスだとわかってはいますが、たいしてCRPも上がっていない子にも点滴で抗生剤をやっている日本の医療に、正直複雑な思いです。もっと必要としている人のところには届いていないのに、日本の人はラッキーだな・・・って思ってしまったり。もちろん、ちゃんとお仕事はしていますよ!現実の医療や人の命の扱われ方なんて、俯瞰的に見てしまうとはっきり言って思いっきり不平等だけど、それは目の前の患者さんには全く関係ありませんから。
でもね、扱われ方は不平等でも人の命の重さは平等のはず、と私は信じています。何とか、その底辺とのレベルの差が縮まっていくといいのですが!!