そしてドアへ帰る

 私を乗せた地元バスは右へ左へと体を揺らしながら、大儀そうに進んでいきます。それにつられて、乗っている私達も右へ左へと大きくゆらーりゆらり。それにしても、今まで通ったことのある道でもこうしてバスに乗って視線が高いと、全然景色が違ってまるで初めての道みたい!自分で運転していると、こんなにゆっくり「こんなお店があるんだ〜」なんて道沿いを見たりしないですものね。面白いな面白いな♪ 幾つかのバス停を過ぎ、「次はイロオ、イロオ」というアナウンスが聞こえたところで、少し離れて座っていた先ほどのおばあちゃんが私を振り返り、「ここですよ」と合図して下さいました。ああ、バス停の名前は”イロ”ではなくて”イロオ”だったのね。聞き取れていませんでした。ここまで、バスの料金は200円。たいした距離ではなかったみたい。
 バスを降り、おばあちゃんとはお礼を言ってお別れです。彼女はさらに「この太い道を行けば月坂に行きますよ。気いつけてね。」と教えてくれました。ああ、最後まで親切です!さて、何となく道は覚えているので美容院に電話です。
ルルルルル・・・・   ルルルルル・・・・
あれ、おかしいな。日曜なのに出ないってどういうことかしらん。番号は間違ってないよね?もう1回。
ルルルルル・・・    ルルルルル・・・
諦め。どうやらお休みみたいです。着いたら電話すればいいや、と思っていたのでちょっぴり拍子抜け。あらら、こんな所へ来てみたけれどどうしようかしらん?
周りにはたいしたお店もないので、よし、時間のある時にはここ!本屋さんへ行ってみることにしようーっと。この辺に本屋さんはあるのかな・・?
土地勘が全然ないので、近くにあったスーパーでガムを買いつつ、レジの方に聞いてみました。
私「この辺に本屋さんはありますか?」
レジの女性「あーあるある!JAの先の信号のところに、ミヤムラ(だったかな?)って所がありますよー」
おお、心強いお言葉。わかりやすい場所ですし、歩いてすぐだと言うのでお礼を言って外へ出ました。
本当に歩いてすぐの所にJAを発見し、その先の信号の所、教えられた場所に”ミヤムラ”という看板を見つけてお店に着くと、
おばさん、ここは電器屋さんなんですけど!!!
まあいいや。そんなこともあるわ。インドではよくあることじゃない。
そろそろ真っ暗だし寒くなってきたので、本屋さんはとりあえずいいとして来た道を帰ることにしました。そんなに遠くないような気がしたので、今度は行ける所まで歩いてみることにしよう!私、知らない場所を歩くのも楽しいから大好きです♪
しばらく行くと、かなり寂れた小さなショッピングモールがありました。でも化粧品とかも売っているし、ここなら本屋さんがあるかな?と思い入ってみることに。でも残念!やっぱりここにも本屋さんはなくて、「近くにありますか?」と聞くと「一番近いのが1.5kmくらい先にありますよ!」とのこと。1.5kmかあ。。普通に歩ける距離よね?もはや目的が本屋さんとなった私は、そこを目指し国道沿いにテクテク歩き始めました。
しばらく行くと、道の少し奥まった左手に暖かい光が見えました。看板にはニコニコ笑うイタリアンな太陽と、
”美味しいパンとラスクのお店”
という飾り文字。これは入ってみるしかない!!
お店の中はほっとするほど暖かく、甘く香ばしいパンの香りでいっぱいでした。何だか素敵な発見をしちゃった気分!!明日の朝ごはん用にはちきれそうにつやつやしたパンを買い、お店を出ようとした時に「今日はもうおしまいだからどうぞ」とお店の方がクリームの入ったデニッシュを私のバッグに入れてくれました。わー何だか嬉しい!ますます得した気分!
ホクホクしたパンと心を胸に、テクテクと歩き続ける私。しかし・・・
・歩いていても寒い
・国道沿い(しかも田舎)なので、歩いていてもあまり楽しい道ではないということに気づいた
・排水溝の溝にしょっちゅうブーツのヒールがはまるのが、結構不愉快
というわけで、最初に意気込みもどこへやら、あえなく次のバス停からバスに乗ってしまいました。バスに乗ったところで、やっとI君から「どこで遊んでいるの?」と電話。もう30分くらいしたら帰れそう、とのことでした。私も「今から帰るところー」と言っている横を、目的の本屋さんが通り過ぎていくのを発見!迷わず次のバス停で降りてしまいました。
やっと本屋さんに辿り着き、私が好きな”Grazia"はなかったけれど久しぶりに”Vogue"やらインテリア雑誌やらに浸りました。それから気になっていた本を数冊。そうこうして本屋さんを満喫したところでI君が迎えに来てくれて、やっとおうちに入れました。
さて、この日の収穫は、
・家の鍵を持っていなかったおかげで何だか楽しいプチ・プチ旅行ができたこと
・美味しいパンが買えたこと
緒方貞子さんの「私の仕事」という本
・この日記で文字に色をつけるテクニックを学んだこと
でした。こんなしょうもない日記にお付き合いいただいた方、大変ありがとうございました(笑)