プラナリア

 しばらく前から、玄関に本が置いてありました。私が買ったんじゃないから彼のです。置いてあった、というか玄関にとりあえず運んでそのまま忘れられている・・・という状況が正しく、それをさらに放っておいた私も私なのですが、とにかく家に入ると真っ先に目に付くのがこの本だったのです。
       
こんな光景。しかも題名が『プラナリア』。
気になります。プラナリアってあれでしょ、高校とかの生物でよく出てきた、体を切るとそこからまた体が生えてきてまた1個体になるっていう・・・。そんなヤツが題名を務める小説って、どんなものなのかしらん。先日、ようやく手にとって読んでみました。

 今の社会の波間に、不安定に、でもまあまあ懸命に漂う人々のお話が5つ。どこにでもいそうな。どこにでもありそうな。たぶん、女性の方が共感できるのではないかしら。私が普段読まないタイプの本でもあり、得るものはあまりない気がしたけれど、なかなか面白かったです。
一番好きだったのは、2番目の『ネイキッド』。でもどれも、はっきりとした結末をつけずに終わってしまう感じなのね。立ち話をしてちょっと共感したかな、という相手が、何も言わずにまた人混みの中に溶けてしまったかのような。(最後のはそうでもないかな)だから単純明快、しっかり起承転結、勧善懲悪が好みな私としては、歯切れが悪く感じます。たぶん、これが心地いいという方もいるのでしょうね。
でもまあ逆に、はっきりおしまいにならない所がいいのかも。お話は連続しているそれぞれの人生の一幕に過ぎないわけだし、最後は読み手に委ねられる・・・という感じもするので。だからハッピーエンドが好きな私は、どれも自分で勝手にハッピーエンドになるように、お話を最後まで想像しました!(私はけっこう話に入り込むタイプなので、不安定なだけで放り出されるとこっちも不安定になって、実生活にも支障をきたすのよ。)

繰り返しては読むことはないと思うけれど、飛行機の中とで読むのにはいいかな、といった軽い一冊でした。